(26)軽々に扱われ

4月20日の午後、S社のM担当から携帯に電話があった。内容は、E社製のインクの発注で1本だと送料をいただきたい。2本以上であれば送料は掛からない。というのである。何故だと聞くと、彼曰く、自社(S社)のシステム上の理由だと言う。

また始まったと思った。この手の通達事項を口頭(電話一本)で済まそうという彼のやり方には、以前から軽くあしらわれているなあと感じてはいた。例えば、このS社の製品の内のどれかが廃番になった場合や、その代替品情報など、これまで文書が送られて来たことがなかったのである。いつも、こちらから発注を掛けてはじめて、それは廃番になりましたと電話がかかってきて慌てふためくパターンだった。廃番品の代わりの製品についても正式名称、規格、単価など、こちらが毎度メールとか書面で要求しない限り電話で済ませることができればそうしたいような雰囲気だった。普通の取引であれば書面で、しかも事前通達が常識である事柄なのに、S社は、もしかしたら、行き当たりばったりが当たり前と思っているのかもしれない。

今回、久しぶりに命の危険(血圧上昇)を感じるほど頭にカッと血が上ったのは、上記に加えて送料がかかる、その理由である。S社内のシステム上の問題だという。分かりやすい言葉で表現してもらいたいと問うと、1回の発注金額が30,000円未満だと自動的に送料がかかるのだという。これはS自社製品に限ってのことであると以前から認識していたことであるが、他社製品のインクなのに自社製品と同様に送料を付けるというのである。つまり、インク1本だと30,000円に満たない、2本だと30,000円を超えるから送料は掛からないというのである。

そうであれば、インクのメーカーのE社がその旨の文書を出すべきであると問うと、あくまでもS社の社内システムの問題だと言うのである。インクメーカーのE社のインクは、S社を通しはするが物流は極めて単純明快でE社の九州管内の物流センターから直接エンドユーザー向けに出荷されることは分かっていた。何故かというと、梱包の見た目がE社発送のものであるということがひと目で分かるのである。しかも、午前中の受付だとその日の内に出荷されるので九州管内だから翌日にはエンドユーザーの手元に着荷することも分かっていたのである。だから、送料はメーカーE社が負担していたことも当然分かっていた。それなのに、S社がインク1本だと1,100円(税込み)をいただきたいというのだから、こんな詐欺紛いなことをエンドユーザーにどう言って説明しろと言うのか、とんでもない馬鹿野郎な担当者に腹が立ったのである。聞けば、これを「はい分かりました」と二つ返事をした同業者もいたらしいが、どんなアホなのか知りたいぐらいであった。冷静に対処し平生でいられる方がおかしくないか。

 

以上の内容で、ブチ切れた。私は理不尽なことに屈するつもりは毛頭ない。M担当には軽々に扱われた腹いせに言葉が粗くなり、ついには、話にならん!と言って通話をたたき切ってやった。大人げないとは思ったが、その後は、どうにでもなれと思ったし、彼にはいい薬だと思い、放ったらかしにした。

その後10分もせずに、M担当から架電があったが、こともあろうにまだ食い下がって開き直りも甚だしかったので、また、ブチ切れさせられた。命が危ないと本当に感じた。私の人生でもここまで横着なのは、の人物である。

ただし、彼の良いところというか、変に正直者であるのは認める。彼には嘘がないのが判るのである。商売をする上で当然ではあるけど、これまで、彼を怪しいと感じたことはない。

「出るところに出る、E社にも相談して御社(S社)との取引を止める」と宣言したら、あっさりと、この送料の申し出を白紙にすると前言撤回したのである。私としても、何もなかったことにした。この歳になってまで、本当にうんざりな気分を味わわされた。

M担当は、20年以上の入社歴なはずなのに、理不尽なことでも上司から言われるままになっているのではないかと指摘し、代わりにその上司にガツンと言ってやろうかとも言ってやった。