(50)最近のMicrosoftを騙った偽警告では、大音量のビープ音を出さないので逆に騙されやすいのではないか。

インターネットを見ているときに、突然、Microsoftを騙(かた)ったコンピュータウィルスに感染している等の偽の警告とか偽のサポート用の電話番号等が表示されるたぐいの現象については、この3、4年の間に筆者の取引先や旧友宅でも数件対応したことがある。その数件ともすべて電話越しの対応で、まずうるさくて恐怖にかられるほどの大音量のビープ音を止めたいのだが、何をしようにもマウスが利かないから、どうにもならない大慌ての状況に対し、いずれも電源ボタン長押しのシャットダウンで事なきを得てきた。

しかし、2024年3月の類似のケースでは、大音量のビープ音は鳴らないケースだった。突然、Microsoftを騙ったコンピュータウィルスに感染している等の偽の警告及びサポート用の電話番号が表示され、マウスが利かない状態にはなるけれど、まったく音を鳴らさないことで、逆に割と落ち着いた状況下で、偽の警告をじっくりと読ませられ、冷静に偽のサポート電話番号に架電してしまい罠に誘い込まれ信用させられ、リモート操作された上に、言われるがままコンビニでサポート料金としてプリペイドカードを購入して支払ってしまったという、事後の相談を受けたことがあった。

この数年で騙(だま)す側は、巧妙に心理を突いてきている。つまり、ビープ音を鳴らさない方が騙しやすかろうと、経験的に手口を進化させてきたのだと推察する。

このお客様の実際の被害に接し、大変申し訳なく腹立たしい思いと、未然に阻止できなかった情けない思いが、後から後から悔しさになってきて、ふと、パソコンにはセキュリティソフトがインストールしてあったのになぜ止めてくれなかったのかという、単純な疑問が湧いてきたのである。

そこで、セキュリティソフトなどの設定で、この偽の表示出現を阻止できないものなのか、筆者のお客様でインストールしているところが最も多い「ウィルスバスタークラウド」と「Trendツールバー」及び、筆者の社内のインターネット回線であるBBIQが提供している「マカフィーマルチデバイスセキュリティ」と、「マカフィーウェブアドバイザー」について、各社にメールで問い合わせてみた。

二社の回答はいずれも、「ウィルスバスタークラウド」と「Trendツールバー」も、また「マカフィーマルチデバイスセキュリティ」と、「マカフィーウェブアドバイザー」も、この偽の表示出現に対しては、今のところ未然に阻止できない、とのおおむね同じような回答だった。つまり、このMicrosoftを騙った偽の警告と偽サポートの画面の表示出現は、インターネット上の広告の配信として表示されているのであって、今の技術ではセキュリティソフト側がリアルタイムで偽の表示であるかどうかを正しく判定することが難しい、というような回答だった。

今は頼るべきものがないのである。何とも怖くそして情けない現状に唖然とするばかりである。

ちなみに筆者のパソコンには、広告がうるさいので「Edge」にも「GoogleChrome」にも、それぞれの拡張機能に、全部ではないがある程度の広告の表示を止めてくれる「Adblock Plus」を入れている。

根も葉もない筆者のまったくの思い付きだが、もしかして、「Adblock Plus」が利いて、偽の警告などの表示を阻止してくれているのかもしれない。もしそうだとしたら「Adblock Plus」がこの問題の救世主となりうるのかもしれない。