(2) パソコンメーカーの対応は、究極はどこも似たり寄ったり

筆者は、パソコンを販売したりサポートする仕事に携わり何年になるだろうか。Windowsが出る前に、AX機とか、DOS/V機とか、もっと古くは、よく覚えていないがメーカー独自のOS(CP/M)搭載機も扱っていたころからである。

職歴からすると1988年頃からである。三菱、NEC東芝富士通EPSON、HP(Compaq)、DellMac、マウスコンピュータなど時代とともに変化した。今はサイトでカスタマイズしやすいメーカーを扱うようになった。

大きな問題として過去には、ある日突然内蔵ハードディスクが認識されなくなるという問題を抱えたこともあった。最近は、メインボードのリコールでユーザーに5日ほど業務を停止してもらう事態も経験した。この数年、解決しない問題を引きずったままでメーカーの回答待ちの状態が続いている案件もある。大小、枚挙にいとまがない。

これらの問題は、ハズレを引いたと諦めざるを得ない。サポートが長引いてもそのコストをメーカーは見てくれない。また、何年分のデータが蓄えられていようと、完全にメーカーに非があったとしても、メーカーは絶対に内蔵のデータを保証はしてくれない。

ちなみに、昨年の秋口来、Windows10のアップデートについても多数のユーザーで何らかの問題が発生した。中には、正常にアップデートした最後にモニタに何も表示されないという不具合が判明した機種もあった。また、アップデートの途中で何も反応しなくなり、リカバリ領域からの工場出荷段階まで戻すこともできなくなったマシンもあった。

一言で言えば、Microsoftの罠にかかった。というのが筆者の見解だ。Microsoftの戦略に付き合わされその不手際の為に、どれだけのWindowsユーザーが迷惑を被ったか計り知れない。この問題についてのニュースは、6月のある日、夜9時のNHKのニュース番組で見ただけだったが、その時の記者からの厳しい質問に、Microsoftの女性広報スタッフの取り繕った答えにならない答えを返す表情を、今も忘れない。

WindowsiOSAndroidUNIXと、世にスタンダードがいくつもあるのは販売やサポートする側としては学ばなければならないことが多くなるわけで考え物である。しかも、各社のユーザーの囲い込み戦略から派生した中途半端な新技術に付き合わされ、その尻拭いをさせられる側の身になってみて欲しい。この手の問題には特別に電話窓口を用意しているというが、つながったためしがない。

と愚痴を言っても始まらない。すべて人間のいい加減さがなせる業である。だから、旧態依然、どこも似たり寄ったりなのである。

(1) B社法人向けNAS製品の電源ボタンの陥没癖と、バックアップ失敗の原因の曖昧さ

まず、B社法人向けNAS製品の電源ボタンの陥没癖について

2015年4月時点でのB社の法人向けNAS製品のラインナップの中で、ラックマウント型を除くデスクトップ型すべてにおいて、電源ボタンの仕様構造が同じであるということをメーカーのサポート窓口の方から説明を受けた。

なぜその説明を受けることになったのかというと、簡単に言うと、同じ構造の電源ボタンでは、怖いから異なる電源ボタンを採用した製品はないかを尋ねたかったからである。

なぜその電源ボタンが怖いかというと、類似した不可解な異常現象がその1、2年前から複数の納品先で発生していた状況で、たまたまあるユーザーで何もオペレーションしていないのに電源が勝手に落ちるという現象があり、その現象を確認するうえで手動によるシャットダウンをするときに(通常は、電源ボタンを長押し)、軽くタッチしただけでシャットダウンが始まったことから、電源ボタンが原因で色々な異常現象が起きているのではと直感し、ユーザーの業務を止めるわけにはいかないので、ユーザーにその事情を説明し費用折半で新品の同型機を購入し、データや環境を運用移行し終えた後、その異常の起きていたNASを引き上げ、思い切って電源ボタンの個所を分解(非常に簡単だった)したところ、電源ボタンが陥没して元の位置に戻らずそれが癖になり、内部のスイッチが半押し状態になってしまうことがわかった。手で触れる部分の電源ボタンは、内部で正面に向かって左側から伸びる透明なプラスチックのバネ状のもので支えられ元の位置に戻る構造になっていた。このプラスチックのバネが右側にはないのでボタンが戻る時のボタンそのものとボタンを取り巻く外側との物理的な摩擦や干渉が起きやすいバランスの悪い構造であることがわかった。誰でも判断できる単純な理屈であるから、思わず「仰るとおりですね」と答えた正直な電話窓口の女性もいた。

これらのことをB社サポートに投げかけたところ、他のユーザーからの同じようなサポートや修理の履歴はないとのことだった。しかし、この手の製品は、普通一般的なユーザーは、1台導入していることがほとんどであり、複数台で似たような異常現象を比較できるような環境ではないのだと思う。従って、一般のユーザーから電源ボタンの陥没癖について限定したサポートや修理の依頼があるわけがないのではと思うのである。

また、電源ボタンの内部構造上の欠陥ではないかという指摘に対しては、製品開発段階で第三者機関において基準の品質テストをクリアしている物理的構造であるとの説明で突っぱねられた。

それはそうであろう。大企業が、このようなことについて易々と個人に対し、非を認めるわけがないのである。

直接人命にかかわることではないが、よくよく考えるとNASに蓄えられるファイルは、その企業の働く人たちにとり、ある意味、命にも代えがたい大事なものであるといっても過言ではないのではなかろうか。もしある日突然、過去数年分の全社の提案書、見積書、発注書など基幹業務にかかわる情報が見られなくなったら管理者のストレスは計り知れない。つまり間違いなく人の心労、いわんや命にかかわる問題なのである。その理由を付けて、NITEに通告したが、丁寧にお断りされた上で弁護士に相談するように促されたので、これも経験と弁護士に無料の範囲内で相談をしたが、個人が訴訟することになるらしく、そこまですることもなかろうと諦めた。この時点でやっと、バカバカしさを感じた。

ところで、電源ボタンの陥没癖がついて、こちらで引き取り分解したマシンは、ボタンの陥没癖(内側の摩擦や干渉)がないように削り、ボタンが正常な位置に戻るようにした。その後、自社のファイルの保存をしているが、以来、以前発生していた問題はまったく発生していない。他の複数のユーザーにもこの問題を説明し、電源ボタンでのシャットダウンはしないよう運用を変更していただいたり、あまり必要性のないユーザにも、毎日業務終了時に電源を落とさないようにB社指定のバッテリーとバックアップ用にUSBHDDを導入していただいた。その結果、すべてのユーザーでまったく異常現象が発生しなくなったのである。

 

次に、バックアップ失敗の原因についての曖昧さである。

これも複数のユーザーで、度々経験してきたことで「I54」の対応方法については、B社がサイトで公開している。それによるとバックアップに失敗する原因は例えば、ひとつのファイルの容量制限だったり、使用してはいけない文字だったりとしている。しかし、筆者がそれを試してみて分かったことだが、実際探し出すには膨大な時間がかかり、例えそれを探し当て適正に処置したとしても、結果的にその処置によって解決に至ることはなかった。

B社の対応策は、そのどれも正解なのだろうが、実際、筆者は全く異なることで問題を回避してきた。それは、バックアップ元を小分けにするとか、逆にまとめるとかで回避できたのである。

この問題についてのB社の対応方法は、それが原因になっているかもしれないし、原因になっていないかもしれないという曖昧な対応方法であることを明確に説明していないことに問題がある。サポートの窓口の係りの口調からもこの問題に対する説明はとても歯切れが悪いと感じる。おそらく人類のこの分野(ファイルシステム)に対する未解決の難しい問題なのだろう。